いや、有用ではないかもしれませんが、一応遊戯王というゲームの範疇で起きる話です。ドラフトやゲートボールのような特殊フォーマットで遊ぶときとか、15年前にタイムスリップしたときとか、次の改訂でここ15年以内に刷られたカードが全て禁止されたときのために覚えておいても損はないでしょう。
今回扱うデッキ切れとは《ヘル・テンペスト》や《精気を吸う骨の塔》によるデッキデス戦略ではありません。普通の対戦でメインから発生する普通のデッキ切れのことです。
「『普通の』対戦でメインから発生する『普通の』デッキ切れってなんだ……?」ともう既に意味がわからない人も多いと思うので、盤面を用意しました。

!?
こちらは相手の《マシュマロン》が、相手はこちらの《ボタニカル・ライオ》が倒せずに盤面が膠着しているという状況です。
こちら視点では、《マシュマロン》には強力な戦闘破壊耐性があるため《ボタニカル・ライオ》《死霊騎士デスカリバー・ナイト》では突破できません。まごついているうちに相手の伏せも厚くなってきてしまい、無制限の《神の宣告》を筆頭に《万能地雷グレイモヤ》《奈落の落とし穴》などの強力な除去が控えていることが予想されます。《マシュマロン》に対してクリティカルな《神聖騎士パーシアス》や《異次元の女戦士》を引いてきたところで、攻撃は簡単に捌かれてしまうでしょう。
一方で、相手視点でも2000という高守備力を誇る《ボタニカル・ライオ》を超えるのは至難の業です。《死霊騎士デスカリバー・ナイト》によって《ならず者傭兵部隊》や《ドリルロイド》も通りにくいですし、厚い3伏せを乗り越えなければならないのは相手も同じです。
このようにお互いに容易には突破できない盤面が発生し、残りの山札を尽くしてもライフを減らせなくなった場合、勝負はデッキ切れによって決着します。
こういった、デッキ切れによる決着が予想される試合のことを「デッキ勝負」と呼ぶことにします。勝負を分けるのはもはやライフではなくデッキだからです。
昔はこういうことが本当にありました。
《マシュマロン》が制限カードとして猛威を振るっていた頃。カードプールには強力な除去効果を持つシンクロモンスターなど存在するわけもなく、そもそも除去効果を持つモンスターすら数えるほどしかおらず、《ライトニング・ボルテックス》や《地砕き》が規制される時代。そんな世界では、戦闘破壊耐性モンスターが出るや否や除去できずにゲームが膠着することは珍しくありませんでした。ちなみに、戦闘破壊耐性モンスターが増え始めて突破も容易になってきたのは《アルカナフォース0−THE FOOL》が登場した2008年頃です。
戦闘破壊耐性モンスターほどではないにせよ、高守備力モンスターを突破するだけでも今よりは遥かに難しく、《ボタニカル・ライオ》は「高い攻撃力を持ちながら壁にもなる」というだけの理由で高い評価を得ていたものです。《レベル制限B地区》《グラヴィティ・バインド−超重力の網−》を搭載したロックデッキが相手ならもちろんのこと、初心者にありがちなちょっと壁を多く入れただけのスタンダード同士の対決でも少し対処を間違えればデッキ勝負に突入していました。
なお、「低速デッキ同士のマッチングにおけるデッキ切れに備えたセオリー」という概念はMtGやハースストーン等の他カードゲームには明確に存在します。遊戯王ではシンクロ登場以降ゲームが高速化してから失われて久しい古代技術ですが、同じように文書化して確立しておこうという意図があります。
遊戯王においては、他カードゲームと全く同じ内容のセオリーがある一方で、「手札枚数制限」「カードゾーン」「罠のセット」といった遊戯王特有のルールによるセオリーもあります。どちらもデッキ勝負における鉄則という形で詳しく紹介していこうと思います。
☆鉄則1:デッキ枚数を多く保て!
デッキ勝負において、「デッキ枚数が多い方がデッキ切れしにくいから有利」というのは当たり前だと思うかもしれません。
しかし、この鉄則から派生してデッキ勝負の展開やプレイングのセオリーが次々に導かれていき、最後にはそれらを知っている者と知らない者の間に決定的な差をもたらします。
まず、デッキ勝負ではデッキ枚数によってプレイヤーの役割、つまり「攻め」と「守り」が定義されます。
ここでデッキ勝負の「攻め」とは「デッキ枚数が少ない方」、「守り」とは「デッキ枚数が多い方」です。何故なら、盤面が膠着したままデュエルが何もなく進行したとき、「デッキ枚数が少ない方」はそのまま負け、「デッキ枚数が多い方」がそのまま勝つからです。そのため、「デッキ枚数が少ない方」は何が何でも攻めて膠着を打開しなければならないために「攻め」に回らざるを得ず、逆に「デッキ枚数が多い方」は現状維持していれば勝手に勝つために「守る」ことが目標になります。
そして、基本的には「守り」が「攻め」よりも圧倒的に有利です。このまま何も起きなければ勝つのが「守り」で負けるのが「攻め」ですから、前者の方が有利というのは当たり前ですね。
また、一般的に言って膠着した盤面を打開する難易度は高いです。こういう盤面で「攻め」の障害になっているモンスターは大抵「戦闘破壊耐性モンスター」「高守備力モンスター」のいずれかですが、いずれもデッキに最も多く入っているであろう下級モンスターを何枚使っても突破できません。
突破には「除去カード」か打点で上回る「上級モンスター」を引いてくるしかありませんが、除去カードは「一度しか使えない」、上級モンスターは「罠で弾かれる」という難点があり、それぞれ「新しい壁を出し直す」「罠を伏せる」というだけの行為で簡単に防がれてしまいます。よって、一度でも状況が膠着して防御札の溜め込みがスタートすると、漫然と攻めているだけでは「攻め」側が状況を打開することは難しくなります。
結局のところ、最初に述べたように、デッキ切れ勝負で勝つためにはまずは「守り」に回ること、すなわちデッキ枚数を相手よりも一枚でも多くしておくことが最初に目指すべき目標になります。
「デッキ枚数を多くしておく」といっても、(当時の)遊戯王には「デッキを増やす」カードは《貪欲な壺》程度しかないため、実際にやるべきことは「デッキを減らさないこと」です。そしてそれは意識しておかないと絶対にできない、腕の差が出てくる部分です。
デッキ枚数を減らす行為の代表例は《増援》《キラー・トマト》のようなサーチ・リクルートの発動です。漫然と対戦しているとこれらの発動を控えることはまず有り得ませんが、デッキ勝負では発動することが有り得ません。デッキ勝負において《増援》とは手札調整で捨てるもの、《キラー・トマト》のリクルート効果とは不発にするものです。これがわかっているかどうかで勝敗が決まります。
具体的に言うと、お互いにデッキ枚数が20枚のときに自分が《増援》を打つと、こちらだけデッキが19枚になり、19ターン後の敗北が確定します。比喩でも何でもなく、デッキ勝負で考えなしに《増援》を打つことは、自分からサレンダーすることと大して変わりません。《増援》は手札に持ち続け、手札が余ってきた段階で用途の無いカードとして手札調整で捨てることになります。
お互いの盤面に守備モンスターが並び始めたあたりで、早い段階から「これはひょっとしてデッキ勝負になる?」と予想してサーチやリクルーターの発動を控えることで、いざデッキ切れ勝負に突入したときに「守り」のポジションを取れる可能性がグッと上がります。
このように、デッキ勝負においてはその本質を理解した上で行う異常なプレイングが勝敗を分けます。「デッキ枚数を多く保つ」と言えば簡単ですが、こうやってプレイングレベルにまで落とし込んでみると、セオリーを知らない人はセオリーを知っている人にまず勝てないレベルの絶望的な差が生じることがわかります。
☆鉄則2:「デッキ勝負」を相手に気付かれるな!
盤面が膠着し始めたときに「この勝負、ライフではなくデッキが無くなることで決着が着きそうだな」と思っても、相手にそれを悟られてはいけません。可能な限りライフ勝負をしているフリをしながらデュエルを続行します。
何故なら、相手がそれに気付くと「守り」のポジションの取り合いになるからです。
デッキ枚数の多寡というのは本当にシビアです。基本的に同じ枚数であり、(デッキに触ることが少ない当時の遊戯王では)ライフのように変動させる手段は多くありません。確実に「守り」のポジションを取るためには、自分が自分のデッキを減らさないのと同時に、相手自身に相手のデッキを減らしてもらうことも必要になります。そのためには、相手に試合がデッキ切れ勝負になることに気付くタイミングは可能な限り遅らせなければなりません。何度も言いますが、相手が「デッキ勝負になるか?」と気付いた瞬間にサーチカードの発動を控えてしまう、その一枚が勝敗に直結します。
この鉄則により、デッキ枚数の確認方法には細心の注意を払う必要があります。
自分がデッキ枚数を気にしていることを相手に気付かれてはいけないので、「デッキ残り何枚?」などと相手に直接尋ねるのは厳禁中の厳禁です。自分のデッキをおもむろに手に取って数え始めるのも最悪です。デッキを触るついでに枚数を数えるのもよくありません。
基本的には、別の領域にあるカードの枚数を数えてそれらを合計して40から引くという方法でデッキ枚数を求めましょう。デッキ枚数を数える行為に比べれば、「今手札は何枚?」「墓地確認いいですか?」と声をかけてそれらの枚数を数える行為は自然に行えます。
もちろん墓地のカードを丁寧に5枚ずつ分けて枚数を正確に数えるなんてことはしてはいけません。「枚数を数えているのではなく内容を知りたいだけ」というスタンスを崩さないようにしてください。オススメの墓地確認タイミングは自分のドローフェイズ直後です。ドローしたら、いかにも「墓地に関わるカードを引きました!」という顔をして素早く墓地に手を伸ばし、墓地にいるモンスターを確認するフリをして枚数を数えましょう。《リビングデッドの呼び声》や《生者の書−禁断の呪術−》を引いたのであれば、墓地確認するのも不自然ではありません。
更に、不自然なプレイングを行う際はそれが自然に行われる状況を考えて演技してください。
例えば鉄則1で述べたようにリクルーターの効果は発動してはいけないわけですが、即決で「発動しません」と宣言してはいけません。《キラー・トマト》が戦闘破壊された後、手札と墓地を見比べ、しばらく考えてから「いや〜もう多分対象がいないですね〜えーっとこれ任意でしたっけ? あっ『できる』なので発動しなくてもいいんですね〜じゃあ不発で」です。デュエル中に嘘を吐いたり不正な処理をしたりするのはルール違反ですが、「もう多分対象がいない」は嘘ではなく勘違いです。そして任意効果を発動しないのはもちろん適正な処理です。
また、膠着中はなるべく素早くターンを回した方がいいです。相手がデッキ勝負に気付く前に惰性でターンを回させ、「お互いに状況を打開するためのキーカードを引く勝負をしている」と思わせるためです。
相手がまだデッキ勝負になることに気付いていなければ膠着状況を打開してライフを削ることを考えているはずですから、打開カードに辿り着くためのデッキ圧縮としてサーチカードを打つことでしょう。「ドローした」→「打開カードじゃない」→「仕方ないのでエンド」という応酬が高速で続き、今そういう勝負をしていると相手に思わせている裏でこちらは黙々と全く別の勝負を進行させます。
☆鉄則3:手札調整を恐れるな!
本格的にデッキ勝負に入ると、盤面が膠着するために手札の使い道もほとんど無くなり、持て余した手札を抱えるようになります。
そうして溜め込む手札の数がどんどん増えていき、遂に7枚を超え始めたとき、アド損を嫌うカードゲーマーの本能は「適当にカードをセットして手札調整を回避する」という行為を行いがちです。しかしこれは愚策の極みであり、使い道のないカードを適当に伏せるくらいなら捨てた方がマシです。
理由は「フィールドを埋めてしまうから」です。
手札調整を回避するためにどんどん手札を場に置いた結果、フィールド10枚が全て埋まって手札も6枚という状況は最悪という他ありません。打開できるカードを引いたとき、プレイできる場所がなくなるからです。《マシュマロン》を破壊できる《ならず者傭兵部隊》を引いても出せませんし、《ライトニング・ボルテックス》を引いてもプレイできません(ルール上、「手札からの通常魔法のプレイ」にもゾーンを一つ必要とします)。
それだけではなく、有用なモンスターを置くスペースが減ってくるとその分だけ同時に展開できる攻め手も減っていきます。リクルーターや中途半端な攻撃力のサブアタッカーなど、相手から見て無視してもよいモンスターを並べると、除去効果を持つモンスターや上級モンスターを複数並べる際に邪魔になってしまいます(一度に複数の打開策を同時に展開する「溜め込み」の有用性は後で解説します)。あまり役立たないモンスターはやはり適当に出すよりは手札調整で捨てた方がいいでしょう。
「打開策を引いたときに場を開ければいい」と思うかもしれませんが、膠着状態で一度埋めてしまったゾーンを開けるのは実はかなり難しいです。モンスターゾーンにあるカードを自爆させようにも相手のモンスターは全て守備表示で戦闘破壊が成立しないですし、生贄召喚でモンスターの数を減らせるのは最上級モンスターを出す場合のみです。お互いに動かないので、伏せた罠の発動条件を満たせることもほとんどありません。ちなみに、《奈落の落とし穴》や《炸裂装甲》は自分に打てませんが、《神の宣告》《月の書》《強制脱出装置》は自分に打てます。暇なときに要らなさそうな罠を自分に打って廃棄することを検討しましょう。
今書いた「打開策を引く」は「攻め」側の発想ですが、「守り」側にも同じことが言えます。有効でない罠を捨てるのが惜しいあまりに適当に伏せてしまうと、もっと有益な罠を引いたときにも防御を厚くすることができなくなります。遊戯王では一度に準備できる妨害は最大でも5個しかありませんから、置く罠は厳選しましょう。
例えば、守り側であれば、基本的に攻めを通すためのカードである《盗賊の七つ道具》や、溜め込み時に機能しない《マジック・ドレイン》の価値は著しく下がります。また、一ターン中に連続して打つことを想定しにくい《奈落の落とし穴》を複数枚置くよりは《炸裂装甲》や《マジック・ジャマー》に散らすべきです。他にも、相手のデッキには《王宮のお触れ》が入るか、テーマデッキ特有のキラーカードを持っているかなど、状況に応じて最強の布陣を適宜考えてください。
☆鉄則4:溜め込んで一気に攻めろ!
デッキ勝負で自分が「攻め」側になってしまったときは、何とかして相手の牙城を切り崩すしかありません。
その際、打開策をトップしたからといって意気揚々と出すべきではありません。それは大事に手札に持っておき、相手の伏せを突破するのに十分な枚数が溜まったときにまとめて叩き付けます。
これは、伏せカードは5枚しか置けないのに対して、手札は6枚(ドローフェイズのドローも込みで最大7枚)持てるという枚数差を利用するためです。相手の妨害をセットカードだけに単純化して考えると、こちらが1枚の手札で1枚の伏せを剥がせるとすれば、手札全てが有効牌である場合、7-5=2枚が通ります。更にもっと広い視点で見ると、相手がこちらのターンに使える妨害カードは場のモンスター5枚+セットカード5枚で最大10枚であるのに対して、自分がこちらのターンに使える攻め手は場のモンスター5枚+セットカード5枚+手札7枚=17枚です。最大限溜め込めば、17-10=7枚分有利です。
もっとも、現実的には除去カードが貴重な当時、そもそも攻め側が使える打開カードがデッキを全部掘ってもそんなにないということも多いです。その一方、守り側の5伏せが全て攻め側の攻撃に対して有効であることは少ないですし、通常魔法を発動するために1つスペースを空けていて4伏せに留まっていることも少なくありません。このあたりのバランスは結局はお互いのデッキ内容によってきますが、それでも基本的には攻め側が手札分だけ多くのカードを一度に使えるという優位を活かすには溜め込み勝負を仕掛けるしかないことは常に念頭に置いておきましょう。
また、1枚通せば複数枚を無力化できるキラーカードを持っている場合は1対1交換で消されないように大切に使いましょう。《人造人間−サイコ・ショッカー》や《同族感染ウィルス》が代表例で、それぞれ具体例を挙げて説明します。
まず相手の伏せが《神の宣告》《天罰》《奈落の落とし穴》《炸裂装甲》だとしましょう。ここに《人造人間−サイコ・ショッカー》を生け贄召喚したとすると、確実に《神の宣告》が飛んできます。
このとき、こちらが既に《リビングデッドの呼び声》を伏せていた場合、ただちに蘇生して《人造人間−サイコ・ショッカー》が通り、《サイクロン》や《神の宣告》を含むほとんどの除去ではどかせない状態で定着させることができます。
しかし、自分がまだ《リビングデッドの呼び声》を伏せていなかった場合、《人造人間−サイコ・ショッカー》の再利用は《リビングデッドの呼び声》を引くまで待つことになります。その際に最も恐ろしいのは、相手が空いたスペースに有効牌を補充することです。改めて《リビングデッドの呼び声》を引いて伏せて発動したときには補充された《サイクロン》《神の宣告》で妨害され、結局《人造人間−サイコ・ショッカー》は通らないことが十分にあり得ます。
このように、同じ攻め手でも一度に仕掛けるかどうかで通るか否かが変わってきます。相手に伏せの補充を許してしまうと、実質的に6枚以上の伏せと戦うことになってしまうからです。
なお、「そもそも《神の宣告》を引かれない段階で《人造人間−サイコ・ショッカー》を出せばいいので、《リビングデッドの呼び声》が無くても最速で動く」という考え方もあります。それにも一理ありますし、ライフ勝負の場合は正しい選択でしょう。しかし、デッキ勝負の場合は相手が引いているかいないかに依存した運否天賦になってしまいます。相手が既に伏せを厚くしている段階で攻めを確実に通すにはやはり溜め込みがベストです。デッキを全て引き切る勝負では「(今ある手札ではなく)デッキ全てを使って戦う」という視点を持ちましょう。
次に、《同族感染ウィルス》の有用性は、相手の場に《ボタニカル・ライオ》が二体と《マシュマロン》が寝ているような状況を想定すればわかりやすいです。除去魔法を三枚切るよりは《同族感染ウィルス》を一枚通して全て破壊する方が手軽です。
《同族感染ウィルス》を通すためには優先度の低い囮を使いましょう。《異次元の女戦士》が最も良い例です。《異次元の女戦士》は通常は一対一交換が保証されている優秀な下級モンスターですが、デッキ勝負においては《同族感染ウィルス》と比べると一対一交換しかできないという欠点が際立ちます。
よって、こちらとしては「《同族感染ウィルス》が通るなら《異次元の女戦士》は通らなくてもいい」という立ち位置であり、《異次元の女戦士》が避雷針として先に除去を受けて死ぬ分には一向に構いません。しかし、相手から見れば数少ない除去効果を持つ《異次元の女戦士》に機能されることを嫌い、そこに罠を切ってくれる可能性は少なくありません。つまり、相手が《異次元の女戦士》に《奈落の落とし穴》を打ったのち、《同族感染ウィルス》が無事に着地するというシナリオがベストです。
「召喚は1ターンに1回しかできないから溜め込んでも意味が無いのでは?」と思うかもしれませんが、裏側守備表示を活用することで召喚回数は実質的に水増しできます。《異次元の女戦士》を伏せた状態でターンを回し、帰ってきたターンに《異次元の女戦士》を反転して《奈落の落とし穴》を受けたあとに《同族感染ウィルス》を召喚するというプレイにより、上のシナリオを実行できます。
このように、「裏守備で出して溜め込む」というプレイは崩しの際に常に意識しておいてください。「このモンスターは普通は裏で出さない」という常識にとらわれず、《ならず者傭兵部隊》も《N・グラン・モール》も伏せて出す選択肢を持ちましょう。
☆鉄則5:除去を回避しろ!
こちらが「攻め」である場合、除去を回避して攻めを通すのが目標です。上に述べた溜め込みのプレイも「対応しなければならない伏せの数を減らす」という形で除去を回避していたのですが、除去の回避方法は他にも無数にあります。
このあたりはデッキ勝負というよりは普段の勝負でも使っていける小テクニック集ですが、「リバースの利用」「チェーンの利用」「ダメージステップの利用」など、様々なルールを活用して罠を回避できることは覚えておいて損はしません。
「リバースの利用」については、攻撃を受けたことによるリバースを用いることで召喚反応罠を回避できます。
具体的には、まずモンスターを裏側守備表示で出し、それが攻撃を受けてリバースして生き残った場合、召喚反応罠を受けるタイミングがないため、安全にモンスターを展開できます。これはガジェットのような除去デッキに対するセオリーの一つでもあり、対ガジェット戦の後攻1ターン目では守備力が1400を超えている《死霊騎士デスカリバー・ナイト》や《ボタニカル・ライオ》等のアタッカーはセットから入るプレイが定石です。
こちらが「攻め」である場合でも、相手の攻撃を誘ってリバースを利用できます。一度《ならず者傭兵部隊》などのセットを見せれば、溜め込みを拒否したい相手に殴らせることができるからです。
また、守備力の低いモンスターでこのプレイをする際にキーになるカードが《収縮》です。守備力1000の《同族感染ウィルス》が殴られた際、ダメージステップに《収縮》を打つことで実質的に守備力2000として大抵の攻撃を受け切れます。デッキ勝負では《収縮》はほとんど役に立たないカードですから、カウンター罠さながらに除去の回避に使えれば儲けものです。《収縮》は単純に《奈落の落とし穴》にチェーンで打って回避する使い方もありますが、引き出しは多いに越したことはありません。実際、「裏守備を安全に反転させるために《収縮》を使う」というプレイングは上で述べた裏守備による溜め込みとの相性が良いです。
「チェーンの利用」については、チェーン2以降の逆順処理で罠の発動条件をズラすことを狙います。
当時に汎用性の高いカードでこのプレイングが意識されるものはほぼ《リビングデッドの呼び声》しかありません。04環境でも有効なプレイですが、適当な効果を発動→チェーンして《リビングデッドの呼び声》という手順でモンスターを蘇生させることで、チェーンの逆順処理後には特殊召喚タイミングが終わっているために召喚反応罠を回避できます。伏せに《奈落の落とし穴》があっても《同族感染ウィルス》を安全に着地させるという嘘臭いプレイが可能になります。
当時に他のカードでこのプレイをした記憶はあまりありませんが、マイナーなところで《光と闇の洗礼》や《モンスターレリーフ》なんかがデッキに入っているならこのテクニックを思い出してみてもいいかもしれません。
「ダメージステップの利用」については、ダメージステップでは攻守を変動させるカードかカウンター罠しか使用できないというルールがあるため、ダメージステップに行動することでほとんどの除去罠を回避できます。
最もわかりやすいのはリクルーター、例えば《シャインエンジェル》から《異次元の女戦士》という流れでしょうか。ダメージステップなので攻撃力が1500以上でも《奈落の落とし穴》を受けることなく、《マシュマロン》を突破する除去効果持ちのカードを使うことができます。特に墓守では《墓守の偵察者》から《王家の眠る谷−ネクロバレー》込みで無類の突破性能を誇る《墓守の暗殺者》を引き出すのが強力でした。
やや時代が下る余談ですが、除去デッキに対して《冥府の使者ゴーズ》《トラゴエディア》が非常に強力だったのもこの理由によるものです。彼らはダメージステップに効果で特殊召喚されるため、《奈落の落とし穴》《王宮の弾圧》《神の宣告》といった妨害をくぐり抜けて着地でき、非常に除去しにくいという特徴が打点以上に厄介でした。
以上、デッキ切れ勝負を制するテクニックを5つ紹介しました。ここまで読んだ皆さんには明らかなように、知っている者と知らない者では常勝と必敗と言ってもよいほどの差が付きます。
まあ、ほとんどの方は死ぬまでにこれらのテクニックを使う機会は特にないと思いますが、宇宙からマシュマロン星人が攻めてきたときには思い出してください。